黒帯は語る6 莉子

シリーズ黒帯は語る6回目・・・

今回は竹平莉子初段、現在は女子高生です。

佐藤道場生え抜きの少年部から始めた生徒で1番最初に黒帯を取得した生徒です。このお休みの期間の間にいろんな黒帯の先輩の歩んできた「道」を知り、自分自身の空手道を歩む上での参考にして頂ければ幸いです。どうぞご覧ください。

竹平 莉子 初段

IBKO全日本大会 中学2,3年女子軽量 3位

IBKO全関東 中学2,3年女子軽量 優勝

グランドチャンピオン決定戦連続出場

 

小学3年から空手を始める。佐藤道場の一番最初からいる生徒で現在も家族で空手を続けています。この文章には決して何かに秀でていなくても努力次第でたどり着けることを証明してくれることが書かれています。勇気をもらえる文章ですので是非ご覧ください。

「黒帯は語る6」

 

私が空手と出会ったのは小学3年の時でした。初めは、基本稽古やゲームなどで「空手って楽しい」そう思っていました。

 

しかし、年数が経つにつれ段々本格的になっていき、身も心もボロボロになっていきました。

 

特に組手では、いつもやられっぱなしで効かされてばかりでした。そのため、少年部の強化クラスがある時は前日から緊張し時には泣きながら練習に行く時もありました。

 

そんな中何よりも一番辛かったのは、私よりも後から始めた子達がどんどん勝っていき、私だけが一人置いていかれたり、帯を抜かされた時は本当に苦しくて、悔しくて。でもその想いを誰にも言えず隠れて泣く日々でした。

 

正直、その当時は練習にも身が入らず、もう空手を辞めたくて仕方がありませんでした。

 

しかし、先生はいつも私を見捨てず指導して下さり、何度も励ますような言葉を下さいました。もし、先生があの時、見捨てていたら今の私は確実にいません。そんな先生のおかげで少しずつ勝てるようになっていき「練習の仕方」も分かるようになっていきました。

 

そして、組手が一番嫌いだったのに今では一番と言えるほど好きになりました。また、ずっと負けていた相手に初めて勝つことができた時一番喜んで下さったのは先生や道場の仲間達でした。その時私は、先生だけでなく、多くの道場の仲間達にも支えてきてもらったんだと改めて実感しました。

 

そして、空手を初めてから約七年が経ち、今年黒帯を取得しました。黒帯の審査は想像のはるか十倍辛く、審査後は今までの想いなどが色々込み上げてきて涙してしまいました。当時の私はまさか今自分が初期メンバーの中で誰よりも早く黒帯を取るとは思っていなかったでしょう。
今では私の中でそれは自慢で何よりも宝物です。本当にあの時諦めなくて良かったと思っています。
今、昔の私と同じように辛い想いをしている子達は沢山いると思います。ですが、頑張れば頑張る分だけ結果はついてきます。今勝てなくて悔しい想いをしていても自分の波は必ず来ます。どうか諦めず夢に向かって一緒に頑張って行きましょう!!
竹平 莉子

 

「マイナスをプラスへそれが一生ものの感動と自信に」

 

 

莉子にはいきなり耳の痛い言葉になってしますかもしれませんが、

 

莉子の初期のイメージは、体力なし、運動神経普通、華奢で空手では特に目立つ部分もなく、本当に組手ができるのかと思う程温厚で可憐な女の子でした。

 

私自身も最初正直「この子はこれからどうやって強くしていけば良いだろうか・・・」と正直何度も頭を悩ませていました。

 

今まで沢山の子どもたちを指導させて頂いた経験もあって指導に自信もあったのにその中でも際立って華奢で温厚だったのです。

 

空手も実際すぐに辞めてしまうだろうなって思っていましたが、彼女は意外にも毎日のように稽古に来ました。

 

彼女の文章にもありますが、組手がはじまり彼女にはとても大きな試練が訪れました。

 

華奢でパワーが人一倍ないし、打たれ強さもないし、また温厚な彼女の性格から打たれてから返すという反骨精神も全くと言ってよいほどありませんでした。

 

打たれたら打たれっぱなし、よく壁際まで追い詰められ倒され泣いていました。(初期のメンバーは全員が初心者であったため、組手でも今ほど加減をしてやりませんでした。今は実力があるので加減をした状態で行っております。)

 

彼女が違ったのはここからです。

それはそんな凄い辛い状況でも、毎日のように道場に来続けました。

現に少年部の出席カードの表彰もずっと彼女が1位でした。

 

試合でも最初から勝てたわけでもなくむしろ負けた方が多い位。

 

上級に挑戦するようになってからは、自分より空手歴も戦歴もはるかに多い強豪選手たちを相手にしますからなおさら負けて帰ってくる機会も多くなりましたが彼女の稽古にくる姿勢は変わる事はありませんでした。(それは今も変わりません)

 

この頃から初期メンバーの活躍もすさまじいものになり、中には全国大会で優勝、入賞するようなメンバーも出始め、莉子はさらにやられ始めます。

 

なのでまさか莉子自身でも自分が初期メンバーで黒帯を一番最初に取るとは思ってもみなかったというのはリアルな話です。選手メンバーの中では常に底辺にいたといっても過言ではなかったレベルだったからです。

 

私は現在指導歴19年になり今まで1000人以上を指導させていただき、黒帯になった人達はどういう人かというと・・・けして才能があった人が黒帯になったわけではありません。

 

むしろ才能があった人は長く続かない場合が多かったように思います。(もちろんそのままずっと活躍するパターンもあります)

 

むしろ才能がない人の方が黒帯を取得する方が圧倒的に多いです。

 

その違いは「じぶんが弱いから強くなりたい。」って思いが強いか弱いかの「差」だと思います。

 

才能があればすぐにできたり、すぐに頭角をあらわしたりするパターンが多いので「もうここらへんでいいや」とか思ってしまいやすいからです。

 

一方才能がない普通の人は、少しづつ歩んでいくので手にしたときの感動や達成感を味わえるメリットがあります。

 

よく人と比べてあの人は運動神経が良いから、頭が良いから、体格が良いから・・・と比べてしまうパターンがありますが、才能がないとか、運動神経がないとか頭悪いとか、体格が・・・とか全てこれらは考えようによっては人生を面白くしたり、感動を味わったり達成感を感じるためのチャンスなのです。

 

よく指導する子どもたちにも勇気を出す為にお話しする事ですが、

 

面白いドラマや漫画、物語、映画はマイナスから始まる。弱くていじめられてるから強くなりチャンピオンになる・・頭悪いから良くなり凄い大学に入学する・・いろんな人に邪魔されたり、嫌な事されてたりしているのを試行錯誤しながら状況を覆す・・等、マイナスな状況を覆してプラスにしたとき達成感や感動が味わえるのです。

 

これが自分自身の人生の中身を濃くし、感動を味わい面白くする秘訣で、今マイナスな人ほど人生をより楽しくするチャンスが目の前にあるんだ、自分が人生の主人公なんだから感動する面白いドラマを作ろうと指導中に話をしています。

 

莉子の文章にもありますが、「黒帯の試験を乗り越えた時に色々な想いがこみ上げてきて涙してしまいました」とありますがこれがマイナスをプラスに変えた感動であり、「当時の私には初期メンバーの中で誰より早く黒帯をとるとは思ってもみなかった」→「それが今では私の中何よりの自慢で宝物」という自信であり心の強さになります。

 

これはまさしく自分の人生を物語に例えるなら最高に素晴らしく内容の濃いドラマを作り上げているのと一緒です。

 

莉子には悪いですが才能もなく、華奢で温厚で人一倍強くなるのに時間がかかった彼女ですが、ずっと勝てなかった相手に勝ち地方大会優勝、全国大会でも入賞を果たし、黒帯を巻くに至りました。(現在もまだまだ進化の途中ですが)

 

彼女が唯一他人より続けた事は一つ・・・

 

誰より道場に来続けた事です。

 

それはどんなに厳しく辛い状況でも「いつか必ずこうなる」って自分の可能性を信じ続けたってことのほかありません。

 

自分にできないことばかりみつめていたら希望もやる気も勇気も失います。

 

彼女のように道場に来るという自分にできる小さい一歩を積み重ねた結果大きな自信を手に入れるに至りました。

 

こういう自信こそ今のような厳しい状況下にある日本や世界中にとって若い世代の人たちに身に着けてほしい強い精神、強い心なのではないでしょうか。

 

どんなに底の状態にいたとしても、莉子が底から一歩一歩這い上がるドラマをみせてくれたように今いる少年部の人や道場生全ての方に伝えたいです。

 

あなたはできる!

あなたならやれる!!

 

あなただけの感動の面白い人生(ドラマ)を作って、

 

最高の自信を手にしませんか??

 

 

最後に莉子へ

どんどん自分の想いを形にしていく姿を見せてくれてありがとう。

また、指導やお手伝いをいつも手伝ってくれてありがとう。

 

これからも色んな人に勇気を与えられる人になってください。